イエ

2012年3月31日日常

近所の家が取り壊されていた。
元々どんな家だったか、すぐには思い出せない。
すごく親しんだ町並みなのに、記憶力とはなんといい加減な。
それくらい当たり前の風景だった。

それが、そこだけポツンと抜け落ちたかのように
空間が広がっている。
さも、最初から何もなかったかのように。

そうかと思うと、その空間を塗りつぶすように
新しい家の建築工事が始まった。
基礎作りから始まって、徐々に柱を組み立てていって
何か決められた手続きのように、日に日に家の形を成していく。

白いカーテンに覆われて中の様子が分からなくなって、
ある時、そこに家があった。
さも、最初からそこにあったかたのように。

一個一個積み上げていって、気づくと出来上がっている。
人間の歳を重ねるってそういうことだと思ってた。

1歳1歳に、いろんな出来事あって、積み上げていき
人間として形成されてそして大人になっていく。
だから、去年より今年、昨日より今日、僕は確実に
前に進んでいるだろうって思ってた。

でも建築中の家が事故や災害で破壊されることがあるように
人間も築き上げたものが一瞬に崩れることがある。

3歩歩いて2歩下がる。
これでも前には進んでいる。

中には、せっかく途中まで作ったものを一旦全部壊し
また基礎から作り直さなければいけない時もある。

きっと人間にもそんな時がある。
災害のせいなのか、誰かの仕業なのか、はたまた作り方が雑だったのか
それは分からないけど、もう一度全てを更地にして
最初から築き上げていく。

周りの人達は、新しい家に住み始めているかもしれない。
もう子供も生まれているのかもしれない。

でもその家に僕は住めない。
自分のものを創り上げるしかない。

完成する前に命が途絶えるかもしれないけど、
創ることから逃げることはできない。
人生ってそういうものなのかもしれない。

そっか、「かぞえうた」ってそういう意味だったのか・・・。

♪またふりだしからはじめる　きぼうのうた

東京

http://www.youtube.com/watch?v=Zr2_fYGyaNQ