そういう運命

　定期検査の日だった。先日決心したように、今日かぎりでイントロンを一旦中止するつもりだった。その決心が固いことを知り、母が一緒に行くと言い出した。勝手にすればいい、来ても何も変わらないと思っていた。
　病院が近づくにつれ、僕は変な罪悪感を感じていた。このまま楽になっていいのか？という訳の分からない感情だった。世間にはもっとつらい目に遭っている人もいるのに、これしきのことで逃げ出すのか？と。
何なんだこの感情は？？？僕は、この2年半よく頑張ってきたじゃないか？そう言いきかせるが、裏腹に後ろめたさがあるのは間違いなかった。
　採血をして診察室の前まで行った時、愕然とした。ドアに「K先生は、都合により休診」と張り紙がしてあったのだ。何てことだ、これが運命か？？代診として別の先生に診てもらったのだが、実質検査結果を教えてくれただけだった。注射の件を一応話してみるが、案の定、「2週間後にもう一回来てK先生と相談して決めたほうが良い」とのこと。こっちは、今日仕事を休んできていてそうそう休めない。しかもさっきの感情の残りがあったので、「来月でいいです」とあっさり諦め、注射をもう一ヶ月継続することにした。
　年を越すことになった。とても憂鬱に思うと同時に、何故かほっとしている自分もいる。意味不明だ。自分の感情をどう説明すればいいのだろうか？楽になりたかったはずなのに・・・。
　先日読んだ小説を思い出した。その中で、日本人は快楽を悪とする生き物だと書かれていた。勤勉・勤労、とかく身を削って苦労することを善しとする教育を受けてきたように思う。だから、ただ楽しむってことが苦手な人が多いんじゃないだろうか？何となく後ろめたさを感じてしまったりする。さらには、こんな良い事があったら、近い将来とんでもなく悪いことが起こるんじゃないかと心配したりもする。
　自由を求めて、いつも不平不満を口にするが、実際自由になった時困り果てるのではないだろうか？どうしたら良い？どう振舞えば良い？と。
僕は、自分から苦しみを求めにいっているのではないだろうか？自由になるのを恐れているのではないだろうか？そんな疑問が頭を過ぎる。