強敵

数年前に起きた「桶川女子大生殺人事件」のドラマを見た。ストーカー殺人の話だ。憎むべき相手はもちろんストーカー行為をして、そして詩織さんを死に至らしめた人間だ。でも今回のこの話はそれだけではない。ストーカー行為の相談に対してほとんど取り合わなかった警察、そして事件後おもしろおかしく記事を書いたマスコミ。親御さんが言っていたように彼女は3回殺された。
一番頼りにする警察の対応には愕然とした。ドラマの中ゆえに誇張されている個所もあるとは思う。しかし実際にあったこととして「告訴の取り下げ」を家族に進言したりしているのだ。しかも告訴はまたすぐにできるからと嘘をついて誘導をしている。実際は一度告訴を取り下げたら二度と告訴できないにも関わらずだ。
警察がもっと早く真剣に彼女達の悲鳴に耳を傾けていたら詩織さんは命を落とすことはなかっただろう。被害を受けていた家族にとって自分達の声が届かないということが、どんなに歯がゆくて行き場のない怒りを抱いたことか、考えただけでも胸が苦しくなる。
対岸の火事ではなく誰にでも起こりうる話しだろう。警察に言えば何とかしてくれる、そんな神話みたいな話が昔はあった。実際は面倒なことはやらない、最悪の事態が起こるまで動かない。そんな怠慢がまかり通っているのが実状だろう。
警察のような大きな権力にどうやって僕らは立ち向かえばいいのだろうか。溺れるようにただあがくしか方法はないのだろうか。どんなに大きな声で助けを求めても…。
力が欲しい。
鳥越さんのご尽力によりこの事件の特集が組まれた。その影響もありストーカー法が制定され担当警察官は処分された。
数年前たまたま見ていたその特集番組で鳥越さんの涙を見た。今ならその涙の意味がよく分かる。弱者の見方となり真実を追究するという姿勢に感動した。そうありたいと思う。
〜詩織さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます〜